私が今年観た邦画の中で、文句なく“ナンバー1“!
とにかく美事な脚本、素晴らしい撮影、
そして何より、思わず涙がこぼれてしまう一瞬を見せてくれる役者たちに、
拍手、拍手の映画です。
色彩のない風景の中を孫娘をつれて彷徨(さまよ)う老人は、
黒澤明の『乱』でリア王を演じた仲代達矢だ。
現代のリア王も引きとる親戚は無い。
最後に他人の女から家に来ないかと言われて
顔をそむけた仲代の表情に真の人生を見た。
仲代達矢演ずる爺さんは感情移入しずらい性格の男ではあるが、
それがかえって現代的であり、また何故だか彼の人生の行く末が気になるのだ。
それは孫娘(徳永えり)とのコンビがフェリーニの『道』を彷彿させるからである。
最初は少しいらついて観ていた。
何の映画だ、これは?
しかし、次第に引き込まれていく。
おじいちゃんと孫娘(春)が親類縁者に「受け入れ」を求めて訪ね歩く旅なのだが、
最後は涙を押え切れない自分がいた。
家族、人生、死… 多くのことを考えさせてくれる。
妻に死なれ、娘にも先立たれた男おひとりさま版の現代「リア王」の放浪の旅。
それでもオレにはこんなにもけなげな孫娘がいる!という究極の男の夢。
そんな孫娘のいないオレさまたちはどうしたらいいのだろう?と深く考えさせてくれる。
あったかくて、こわーい映画だ。
僕は増毛生まれです。
昭和二十八年に増毛の沖でニシンが姿を消しました。
その翌年、僕が生まれるわけです。
ニシンの生まれ変わりとして(笑)
その後、日本海沿岸が貧しくなっていくのです。
僕の親父も漁師でした。
まるで、その後の親父の後ろ姿を見ているようです。
感動です。
日本海の漁師は、いつかまた、
ニシンが戻ってくると信じています。
そのようなロマンを感じずにはいられない作品です。
老いの悲しみと肉親の感情の葛藤。
見え隠れする、互いの思いやり。
セリフのない「表情」や「間」に魅せられます。
「人って自分のことしか考えられないの?」
と問いかける孫娘の健気さに、涙しました。
こんな凄いロードムービーがあったのか、人間はおかしくて哀しい。
役者たちが放つ極彩色の光におぼれ涙がとまらなくなった。
涙が止まらなくなる、甘くないラスト。
でも、生きることの歓びを思い知る、切ないハッピーエンド。
この映画に乗れない人は
人生でつまづいたことが一度もなく
家族のことで悩んだ経験のない人では? と思ったほど
心に染みました!!!